読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

がん相談ノート

がん患者さんの相談を日々受けている記録と呟き

「希望を持たせてほしい」って結構むずかしい

相談者について

広田やすおさん、50代後半、家族

奥様(50代)が人間ドッグ「がんかもしれない」と指摘をされ県内大学病院へ転院。

検査の結果、卵巣に腫瘍があり開腹手術を1ヵ月後に控える。

子どもはいない。

 

相談内容

妻の腫瘍はがんの可能性がどれだけあるのかを知りたいが医師が答えてくれない。

 

 

支援内容

広田さんのお話をさえぎらずに聞くことで「何に不安を感じているか」などを探ることにする。

人間ドッグで下腹部に腫瘍があり婦人科を受診し、MRIやPET-CTなどで検査をし、血液検査で腫瘍マーカーなどの検査も受けている。

腫瘍マーカーは陰性、MRI等で卵巣に腫瘍があることがわかるが「良性か悪性かは開腹して病理検査をしないとわからない」と説明を受けたという。

悪性かと思うと眠れないと不安を訴えられる。

 

「子宮頸がんや子宮体がんは細胞診が開腹せずにできるが卵巣がんは子宮の奥にあり開腹して細胞を取らないとわからない」という説明を受け理解をされている。

 

広「いまの段階で何パーセント良性で何パーセント悪性の可能性があるのかを知りたいのい教えてもらえません」

私「開腹しないとわからないといわれると待っている間は不安ですね。でも先生もはっきり”がん”だと診断をされなかったということは、悪性とは断言できない、良性の可能性もあるということではないでしょうか」

広「でもそれだと悪性の可能性もあるということですよね」

私「卵巣の腫瘍は開腹して術中に迅速病理診断をしてその後に詳しい病理診断をされるという説明はうけられましたか?」

広「はい、それでがんかどうかわかるといわれました」

私「つまり手術を受けないと医師でも診断できないということなのだと思います」

広「でも良性の可能性がどれだけあるか知って安心したいのです」

私「主治医の先生にそれをぶつけられましたか?」

広「開腹しないとわからないといわれました」

私「待つしかないということですよね」

広「はい」

私「では不安で眠れないという辛い部分をどうするか考えませんか?ついつい悪く考えてしまい眠れなくなるということですよね。」

広「はい」

私「広田さんと奥さまの共通のご趣味はありますか?」

広「お笑いの番組を見るのが好きです」

私「悪いほうに考えそうになったらお笑いのDVDとか見るのはどうですか?レンタルショップに奥様といったりお店まで散歩するのも気分転換になると思いますよ。」

広「そうですね、待てといわれたのだから待つしかないんですよね。その間、凹んでもしょうがないですものね」

私「(内心ホッとした)」

広「でもやっぱり良性の可能性を知りたいんです。相談員Aさんは良性の可能性は少なからずあるとお思いですか?」

私「主治医の先生の説明ではそうだったんですよね、残念ながら私は医療従事者ではないので診断はできません」

広「希望をお願いだから持たせてください」

私「広田さん、まだわからないことを”悪いほうに”考えるのをちょっと変えてみましょう。奥様は仕事を続けてらっしゃる、それだけいまは体力があるということです。」

広「でも家内がいなくなると思うと・・・」

私「広田さん、がん=死では絶対にありません。もちろんがんで亡くなる方もおられますが、いま医師が開腹しないとわからないといってる段階なのだから”今すぐ手術をしましょう”っていういのちに関わる緊急事態じゃないんだと思います。」

広「そうですね、でも何かしていないと不安になります。いま、家内には玄米菜食を食べさせています。ニンジンジュースもはじめました。他に何をすればいいですか?」

私「玄米菜食やニンジンジュースは病院の指導がありましたか?」

広「いえ、家内は味気ないと嫌がってます」

私「広田さん、奥様は入院して手術をしたらしばらく病院のご飯をたべることになりますし、お風呂も自由に入れないかもしれません。温泉などいっておいしいものを食べるとかお風呂に入るとかだと気分転換になったりしませんか?あと食事についてはおなかを切るわけですから腸閉塞とかならないよう入院中にどういう食生活をすればいいのか栄養士さんに聞いてから食事を考えたらどうでしょうか?」

広「そうですね、そうします」

私「奥さまのお好きな食べ物はなんですか?おいしいもの食べて奥様がニッコリ笑う姿をみると広田さんも嬉しくなるかもしれませんよ」

広「そうですね、僕は希望が持ちたいんです」

私「そうですよね、お気持ちわかります」

広「妻もとても落ち込んでいます、相談員Aさんから励ましてもらえませんか」

 

経過

奥さまともお話をしたところ奥さまは「はい、はい、はい、わかってます」と淡々とされ特に落ち込んでいる様子もなくむしろ私が介入するのを嫌がっている様子だったので特段踏み込んだ話もせずに電話を切る。

広田さんは不安が強いらしくその後も朝夕時間関係なくメールや電話で「不安になったので話を聞いて欲しい」と連絡をしてきては「安心した」といわれることが連日繰り返される。

そのため一度主治医に「不安で仕方がないのでもう一度説明をお願いすること」をしてみてはどうかと勧めるが「医師を前にすると何もいえない」と言われる。

セカンドオピニオンを勧めるも「医師の機嫌を害するので」と拒否される。

その後、主治医から「子宮体がん」と診断が変わったといわれたと連絡がありますます混乱される。

手術中の診断により「子宮体がん」と「卵巣がん」であることがわかり広田さんは吐血され「胃潰瘍」「強いストレス」ということで入院される。

その後、連絡が途絶える。

 

つぶやきとまとめ

広田さんは何度も「希望を持たせて欲しい」と良性である可能性を求めて連絡をとってこられたがこちらとしてそれを言うことはできなかった。

それは間違いではないと思うが、広田さんは明らかにストレスを強く感じておられてその不安が何によるものかはわからなかった。

(医師からの説明をしっかり理解をされていたので)

逆に患者さんである奥様は淡々とされており手術前日まで仕事を続けられたという。

広田さん自身に心療内科等の精神的ケアをすすめることもむずかしかった。

(本人が何をいっても自分のことより妻のことだと話を元に戻しきかない)

私たちはまやかしの希望を持たせることはできない。

でも希望が欲しいという患者さんにそお不安を和らげる言葉の使い方はなかったのだろうか。

広田さんからの連絡は途絶えたが、どうかいま、主治医の先生と治療を続けられ、そして少しでもご夫婦ともに笑顔であってほしいと願うばかりです。

もっと何かできることはあったのではと後悔を持ち続けている相談でした。