がん相談ノート

がん患者さんの相談を日々受けている記録と呟き

角を立てない転院について

相談者について

川越はるこさん、60代、地方の温泉ホテルの女将さん

地元の有力者の紹介で総合病院を受診。

院長先生に手術をしてもらい、現在化学療法中。

 

相談内容

息子がインターネットで調べたところ、現在受けている抗がん剤が、そのがんに対する「標準治療」ではないといい転院を勧めてくる。

しかし紹介してもらい、”特別に”院長がじきじきに手術や治療をしてくださっている背景もあり転院すると決めかねる。
どうしたらよいか。

 支援内容

川越さんはご自身ではインターネットをほとんどしたことがないとのこと。

「がんの治療を快諾してくださったので、あたりまえの医療を受けられていると思っていたのだが」と大変困惑されている。

お薬の名前をインターネットで検索するとそのがんに適応はとっているが、確かにガイドラインには記載されていない。

ただ非医療者である自分がそれだけで「いい」「わるい」は決めれないので医師に照会することにした。

 

私:「現在川越さんが使われているお薬がどのようなものか医師に確認したいので少しお時間をいただけますか」

川:「どれくらいかかりますか・・・」

私:「明日、こちらから電話してよい時間帯はありますか?」

ということで1日お時間をいただき、アドバイザリーとして協力いただいている医師に照会。

 

1980年頃まで(シスプラチンが承認されるまで)そのがんに使われていたお薬らしく「がんが治らない時代に使われていたお薬」という衝撃的な回答が届く。

川越さんのショックを和らげるために言葉を選んで対応すると決める。

 

翌日、川越さんに「標準治療」についてまずお話をして、今はそのがんになったばかりの患者さんには別の抗がん剤が使われていることをお話しする。

川越さんは「角をたてないように今の治療を続けていいか」とおっしゃられるが、「多くの患者さんにとってより効果があった治療が標準治療」だと理解されると、「今の病院でその治療ができないか交渉したいけれど医師が人の話を聞くタイプではない。」とのこと。

 

川越さんと、ご主人、息子さんと話しあってもらい「どうしたいか」を検討してもらうことにして、翌日「転院したい、けれど仕事のことを考えると角を立てたくない」とご連絡をいただく。

 

川越さんとご相談し、息子さんが住んでおられる町の「がん診療連携拠点病院」に転院をすることにする。

その病院にはそのがん学会の専門医がいることも確認。

 

角をたてないようにするにはどうするかを検討した結果、「先生(医師)にはここまでよくしいただいて感謝してもし尽くせないのだが、どうしても息子と嫁が面倒を見たいといって泣くので親としては子にこれ以上心配をかけられないので●●町の病院に転院したい」と申し入れることに。

その時、疑われないよう、ご主人にも同行してもらい、川越さんが「息子と嫁が面倒みたいといっている」といったところで「んだ」と頷いてもらうことに。

(1対1を避けるためと、ご主人は口下手らしく変なことをいわないため)

川越さんとファックスのやり取りをして台本を作り言い回しがおかしくないか、スムーズにいえるかなど確認した。

 

その後、医師は「そりゃ息子と嫁を安心させてやるのも親の仕事だ」といって3行ほどの何をしたかわからない紹介状を書いて渡してくださり無事に転院完了。

転院先にも前医の悪口をいわずに「付き添いをしてくれる家族の都合」として転院を受け入れてもらった。

 

まとめとつぶやき

患者さんからその後、標準的治療が奏効してお元気に温泉のお仕事に復帰されたという連絡をいただいた。

最初に手術と治療をしてくださった医師はご高齢で、もしかしたら最新の情報にアップデートされていなかったのかもしれない(ガイドラインはとっくに出ている著名ながんではあるのだが・・・)。

患者さんが転院をしたいと思っても「もし転院を引き受けてもらえなかったら」「もしまたこの病院を受診しなければならなくなったら」という恐怖がありなかなか勇気がいる行動であることから「角をたてない去り方」というのは永久の課題です。

 

あと、折り返し連絡をするとしたとき「だいたいの目安(いつ返事するか)」を伝えないと患者さんは不安になるので今後は気をつけるようにしている。

答えがその時でなくてもそれまでの状況をつたえ「今しばらく時間がほしい」と伝えたほうが患者さんは見捨てられた感なく受け止めてくださる気がする。

 

予断ですがたまに「超有名な●●名誉教授(どう見てもご高齢)の治療を受けたい」という相談があるのですが、高齢の先生の手術や治療って老眼とか手の振るえとか・・・むしろ怖いと思うのは私だけかしらん。