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がん相談ノート

がん患者さんの相談を日々受けている記録と呟き

家族がインチキ治療を受けたいと願ったときどうしたらいいのか

相談者

海野しんじさん、30代後半、家族

患者は父(60代後半)、消化器のがんであと1ヶ月は持たないと家族は主治医にいわれているとのこと、大学病院に入院中で外出は難しい状態。

 

相談内容

お父さまが一人で病室にいるときに、お父さまの友人が病室に来て「代替療法」の本を置いていった。

お父さまはインターネットなどしたこともなく、本を読み信じ込んでしまった。

この本の著者の治療を受けたいと願い医師から紹介状まで書いてもらっている。

海野さんご自身も過去にがん治療の経験があり代替医療の不確実さをしっているために主治医といっしょに父親には説明をしたが「俺が死んでもいいというんだな」といって家族が見舞いに来るたびに呪いのような言葉を吐くようになった。

 

支援内容

お父さまが家族に「見捨てられた」などと口にしていることで母や姉妹が「話を聞きに行くだけいってみてはどうか」と海野さんにいってくるようになったとのこと。

そのクリニックの名前を教えていただいたが根拠のない免疫療法を高額で行なっている医療機関であった。

主治医の先生のお考えとしては「今からそんな治療を受けてもお金をどぶに捨てるようなものでしょう」とのことだが「本人の気が済むなら説明を家族が聞きに行く(本人は外出できる状態じゃない)のはいいのではないかと思っている」とのこと。

 

海野さんがとてもがん医療を勉強されていることから、こちらは徹底的にその思いを聞かせていただくことに徹した。

その上で海野さんに「海野さんはどうしたいと思われてますか?」とお伺いをした。

海野さんは「父が家族を恨んだまま亡くなるのは辛いので、話を聞きにいくことで父の気が済むのであればそうしてもいいかと思っているが、行くことで代替医療を本当に受けることになるのであれば嫌だ」とのこと。

あと「また同じ人が無責任に情報を父に与えて家族が混乱するのは避けたい」とのこと。

 

そこで

代替医療自体は残念ながらこの国は法律で禁止されていないが、海野さんが理解されているとおりなかには効果が証明されていないものをあたかも治療と称して行なっているものがあること。

お父さまが大学病院内におられる限りはそのインチキクリニックはお父さまに直接治療はできないはずであること。

主治医の先生に紹介状に「もう病院から退院するのは難しいほどの病状であること」を強く記載してもらえばインチキもお金にならないしお手上げになるのでは?

 

情報を持ち込む無責任な他人に対しては、病院に「お父さまにお見舞いがきたときは、お父さまにではなく家族の確認をとってから面会の許可をしてもらう」などお願いをしてみてよいかもしれない。

家族には万が一お父さまにお見舞い客が情報を与えようとしたらさりげなく「この病院の先生にしっかり見ていただいておりますので主治医と相談させてもらいますね」と話が踏み込んだものになる前にやんわり断ってもらうなど対応を決めておくのも良いかもしれない。

次からその方が来ても「いま深く眠ってますので」などと伝え病室にいれないなど家族とその辺の情報を共有して対応するのはどうか。

 

まず「お父さまにとって」もそうだが「ご家族にとって」どうするのが一番いいかお母さまと姉妹と相談してみてくださいとお伝えした。

 

まとめとつぶやき

効果が証明されていない代替医療にたいしての相談が圧倒的に多い。

この治療はどういったものですかとか疑問をもたれての相談の場合はインチキであるかもしれない旨を説明して主治医によく確認をしてみてくださいとお伝えするようにしているが、今回の場合のようにそれを受けたいと患者さん自身が強く望まれたときに、この国では法的にインチキが規制されていないのでとめることはたいへん難しい。

米国ではIND制度といって未承認の医療技術は国に届けを出して臨床試験で行なわなければいけない、コンパッショネートユース制度(人道的な医薬品の提供)を導入するかわりに個人輸入に強い規制をかけているなどインチキ治療をやりにくいよう規制があるのだが、日本では再生医療の一部が審査が必要になったりなど多少進んでいるがまだまだインチキ治療が増え続けている実態がある。

インチキワクチンを製造する企業が薬事承認すらとっていないのに株式上場などしているのを見るとなんともいえない気持ちになります。

 

海野さんご家族は「お父さまが話を聞きに行ったことで納得してくれるなら」と割り切り「家族全員で真贋を見極めよう」「誰かが責任を持つんじゃなく家族全員で決めたことと負担を分かち合おう」と話し合った上で、お父さま以外の家族全員でクリニックに話を聞きに行ったそうです。

まず驚いたのはクリニックの医師は大学病院の紹介状を開封すらしなかったとのこと。

お父さまの病状などは家族に問診を簡単にした程度。

それで「大学病院にいると治療ができないので在宅治療に切り替えてくれれば、出張費をさらに加算する形で訪問治療をする」といわれたそう。

海野さんが「紹介状を読んで下さい、主治医の先生が病状について詳しく書いてくださっていますが今日明日になにがあってもおかしくない状況で退院するなんてできません」と告げると「それは残念ですね」との医師の発言に一同唖然としたそうです。

退院できないと知るとカタログをもってきて「今日の帰りに受付でこのお水を買っていきなさい、がん細胞を流しだすお水です」と「それを飲んで退院できたら治療しましょう」と言われたそうです・・・・もちろん海野さんは購入せずに帰ってこられました。

 

その後もお父さまは家族に「お前はつめたい人間だ」などとおっしゃられるようなことはあったようですが1週間ほどでお亡くなりになったとのこと。

お見舞い客への対応については病院がナースステーションでしっかり情報を共有してくれてガードしてくださったことによりトラブルがおきなかったということです。

海野さんにもご家族にも本当に辛いお父さまとのお別れになってしまったことは残念ですが家族で決めたことだからと負担を分かち合い自分を責めないでもらいたいなと願うばかりです。

 

海野さんから報告のお電話を受けたときも「無責任な第三者の無責任な情報提供で家族の関係が壊されたことが本当に悔しい」とおっしゃっており本当にそのとおりだなと、私たち患者さんや家族を支援する相談を受ける人間も安易に医療介入をしてはならないし、うまく正しい医療に患者さんをつなげるためにどうすればいいのか、私たちが対応できるやり方で試行錯誤しなくてはならないと感じました。